Achievements 研究成果
主な研究成果
Y.D. Jeong†, K. Ejima†, K.S. Kim†, W. Joohyeon, S. Iwanami, Y. Fujita, IH. Jung, K. Aihara, K. Shibuya, S. Iwami, A.I. Bento and M. Ajelli, Designing isolation guidelines for COVID-19 patients with rapid antigen tests, Nature Communications, 13:4910(2022). (†Equal contribution)
決められた回数の抗原検査の陰性結果をもって、早期に COVID-19 感染者の隔離を終了できる、柔軟で安全な隔離戦略を検証するためのシミュレータを新たに開発しました。感染者隔離は感染拡大を防ぐ重要な手段ですが、長期にわたる隔離は二次感染のリスクを下げる一方で、隔離される人やそれを支える社会も様々な負担を被ります。感染予防対策を徹底しつつ社会活動を再開・維持するウィズコロナの時代を迎えるにあたり、抗原検査をうまく利用することで教育活動や社会活動を安全に実施することが期待されています。
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Y. D. Jeong†, K. Ejima†, K. S. Kim†, S. Iwanami, A. I. Bento, Y. Fujita, I. H. Jung, K. Aihara, K. Watashi, T. Miyazaki, T. Wakita, S. Iwami, M. Ajelli. Revisiting the guidelines for ending isolation for COVID-19 patients, eLife, 10:e69340 (2021). (†Equal contribution)
新型コロナウイルス(COVID-19)感染者の隔離を終了するタイミングを検証するためのシミュレータを新たに開発しました。このシミュレータを用いれば“感染性のある患者の隔離を(早く)終了してしまうリスク”と“感染性を失った患者を不要に隔離してしまう期間(隔離に関わる負担)”が計算できます。この結果、リスクと負担を同時に抑えるための適切な隔離戦略を(PCR テストが十分にできるかなど)状況に応じて提案できるようになりました。現在、経験則に基づいた異なる隔離基準が国ごとに採用されている状況に対して、本研究は、科学的根拠に基づいた隔離ガイドラインの確立に貢献できると期待されます。
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S. Iwanami†, K. Ejima†*, K.S. Kim, K. Noshita, Y. Fujita, T. Miyazaki, S. Kohno, Y. Miyazaki, S. Morimoto, S. Nakaoka, Y. Koizumi, Y. Asai, K. Aihara, K. Watashi, R. N. Thompson, K. Shibuya, K. Fujiu, A.S. Perelson‡, S. Iwami‡*, T. Wakita. Detection of significant antiviral drug effects on COVID-19 with reasonable sample sizes in randomized controlled trials: A modeling study, PLOS Medicine, 18(7):e1003660 (2021). (†,‡Equal contribution)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した場合、ウイルス排出量が短期(発症 7 日程度)、中期(発症 14 日程度)、長期(発症 28 日程度)の3グループに層別化できることが明らかにしました。また、全てのグループにおいて、ウイルス複製阻害薬剤やウイルス侵入阻害薬剤による治療開始時期が、ウイルス排出量のピークの前か後かで、ウイルス排出量を減少させる効果が大きく異なることを示しました。つまり、COVID-19 症例では、個人個人でウイルス排出量がばらばらで、また、治療開始時期に応じてそれら排出量への効果が異なってきます。そして、このような極めて不均一な特徴をもつ症例に対して、抗ウイルス薬剤の効果を臨床試験において正しく評価するためのシミュレータ(in silico randomized clinical trial: isRCT)の開発を行い、一部 isRCT を用いてデザインされた医師主導治験(jRCT2071200023)が日本で行われております。
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KS Kim†, K Ejima†, S Iwanami, Y Fujita, H Ohashi, Y Koizumi, Y Asai, S Nakaoka, K Watashi, K Aihara, RN. Thompson, R Ke, AS Perelson‡ and S. Iwami‡. A quantitative model used to compare within-host SARS-CoV-2, MERS-CoV and SARS-CoV dynamics provides insights into the pathogenesis and treatment of SARS-CoV-2, PLOS Biology, 19(3):e3001128. (2021). (†,‡Equal contribution).
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗ウイルス薬剤治療が他のウイルス感染症と比較して困難である理由の1つを解明しました。インフルエンザなどの臨床試験からも知られている通り、一般的にウイルス排出量がピークを迎える前にウイルス複製阻害薬剤の投与を開始することが、排出量を減少させるために重要です。COVID-19 に加えて過去に流行した中東呼吸器症候群(MERS)および重症急性呼吸器症候群(SARS)の臨床試験データを収集・分析すると、COVID-19 では過去のコロナウイルス感染症である MERS や SARS と比較して、早期にウイルス排出量がピークに達することが明らかになりました。また、開発したコンピュータシミュレーションによる網羅的な分析によると、たとえ使用するウイルス複製阻害薬剤やウイルス侵入阻害薬剤が強力であったとしても、ピーク後に治療を開始した場合、ウイルス排出量を減少させる効果は極めて限定的であることを見出しました。
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S. Iwanami, K. Kitagawa, H. Ohashi, Y. Asai, K. Shionoya, W. Saso, K. Nishioka, H. Inaba, S. Nakaoka, T. Wakita, O. Diekmann, *S. Iwami†, *K. Watashi†. Should a viral genome stay in the host cell or leave? A quantitative dynamics study of how hepatitis C virus deals with this dilemma, PLOS Biology, 18:e3000562 (2020). (†Equal contribution/Corresponding author).
ウイルスがもつ「細胞中に引きこもって、安全に子孫を複製する」か「粒子として危険を冒して外出し、別の細胞に感染し増殖する」かの2つの戦略の存在を世界で初めて証明した実験・理論の融合研究です。細胞内・外のウイルス生活環を統一的に記述する多階層数理モデルを開発することで、感染実験から計測される多階層データの定量的分析が可能になった点は特筆すべきです。
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M. Mahgoub, J. Yasunaga, S. Iwami, S. Nakaoka, Y. Koizumi, K. Shimura, M. Matsuoka. Sporadic on/off switching of HTLV-1 Tax expression is crucial to maintain the whole population of virus-induced leukemic cells, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 115(6):E1269-E1278 (2018).
高免疫原性の HTLV-1 の tax 遺伝子発現が間歇的であることを 1 細胞ライブイメージングにより発見し、tax 遺伝子発現は感染細胞が抗アポトーシス耐性を獲得するために必須であることを示しました。また、モデル駆動型の定量的データ解析により間歇的な tax 遺伝子発現が細胞集団全体の生存を維持していることを見出しました。感染細胞が免疫細胞から逃れつつ、抗アポトーシス耐性を獲得するためにウイルス遺伝子発現をオン・オフと調節しながら機能していることを明らかにした初めての研究です。
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Y. Koizumi, H. Ohashi, S. Nakajima, Y. Tanaka, T. Wakita, AS. Perelson, *S. Iwami†, *K. Watashi†. Quantifying antiviral activity optimizes drug combinations against hepatitis C virus infection, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 114: 1922-1927 (2017). (†Equal contribution/Corresponding author)
レプリコンシステムにより抗 HCV 薬剤効果を簡便かつハイスループットに計測する方法を確立しました。また、確立した手法と数理モデルを融合させることで、ウイルス抑制効果と耐性株出現確率を最適化する抗 HCV 薬の組み合わせを網羅的に分析した初めての研究です。
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*S. Iwami†, JS Takeuchi†, S Nakaoka, F Mammano, F Clavel, H Inaba, T Kobayashi, N Misawa, K Aihara, Y Koyanagi, *K Sato. Cell-to-cell infection by HIV contributes over half of virus infection, Elife, 4, (2015). (†Equal contribution/Corresponding author)
HIV が有する cell-to-cell 感染と cell-free 感染の2つの感染モードを記述する数理モデルを開発しました。また、理論的にデザインされた感染実験より取得した経時的データを数理モデルで解析することで、cell-to-cell 感染が全感染の 60%以上を担っていることを明らかにした初めての研究です。
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岩見真吾、佐藤佳、竹内康博. シリーズ現象を解明する数学 「ウイルス感染と常微分方程式」、共立出版、2017年4月.
本書は,常微分方程式の数理モデルに焦点を当て,歴史的に重要な論文と著者らのオリジナル研究を紹介する日本初のウイルスダイナミクスの入門書です。欧米諸国を中心に繰り広げられてきた数理モデルを用いた臨床データの定量的解析および,著者らが近年展開している数理モデルを用いたウイルス感染実験データの定量的解析を詳細に説明しています。また,本書で解析される様々なウイルス感染の実験データもすべて掲載しています。
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